空想島(6畳半)

空想をすることが、生きる糧となり地となり肉となり

ミッション インポッシブル@温泉備忘録

 2016年の夏季休暇で北海道にある上の湯温泉「銀婚湯」に行った。

 

 最高に居心地のよい旅館で、緑豊かな庭園と貸し切り露天風呂5箇所が旅館の敷地内に点在し、散策しながら外湯巡りができるという魅力がある。ただ夏の問題は、蚊と虻と蜂で。それを除けば最高の温泉で、しかも一人旅を歓迎していてリーズナブル

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 これはぜひとも蚊も虻も蜂もいない冬に再訪しなくては、と心に決め。

 そして2017年の11月頃に満を持して行ってきた。雪見風呂求めるならば2月か3月が良いのかもしれないが、下手に雪がコンコンと積もってしまうと外湯が閉鎖されてしまったりするので、11月がギリギリ大丈夫だろうという判断した。というわけで、今日は不穏なタイトルと共に、去年行った冬の2泊3日の温泉旅行の話をしたいと思う。

夏の写真と対比してみた

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 意図して夏の写真と比較できるような写真を撮ってみた。11月といえばもう紅葉も終わり、それどころら落葉しちゃって、外湯巡りの入り口もなんだか閑散とした雰囲気が漂っている。そして写真ではわからないが、とてつもなく寒い。とても浴衣姿で外に出ることなど出来ないくらいだった(出たけど)

 

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 鳥居をくぐると丸くて滑らかな石とふわっふわな苔のある小道にたどり着く。庭園は変わらず手入れされていることが伺える。ああ、なんだか懐かしくなってきて、カランコロンと下駄の音をさせながらゆっくり石の上を歩いた。なんだか温泉とご対面するまでの準備、気持ちの整理をするかのような道だ。

 

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 ケヤキ並木の道も全然雰囲気が違う。夏は生い茂る緑の葉の間から太陽の光がさらりと漏れ出て、ほんのり暖かいのと木の匂いがする遊歩道だったけど。冬は冬で落葉して、青空がこんにちはしている風景も清々しい。太陽の光でケヤキの木に長い影が出来ているのもなんだか絵になっている。

 

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 ちなみにこの落部川をまたぐ吊り橋が外湯巡りをしようとする私にとって、最大の難関だった。だって、遮るものがないんだもの。めっちゃ寒い。吹き荒ぶ体を凍てつかせる風、なんだか若干凍って軋む橋の板、バランスを取るために吊り橋のヒモを掴みたいけど、めっちゃ冷たいのだ。下手すれば本当に冬の川にドボンENDになるんじゃないかと戦々恐々としてた思い出がある。

冬の露天風呂、サイコー!!

 さて、お待ちかねの貸切露天風呂の紹介へとまいりましょう。

 貸切露天風呂は吊り橋を渡らずに行ける「かつらの湯」「杉の湯」、吊り橋を渡った先にある「もみじの湯」「どんぐりの湯」「トチニの湯」の全部で5箇所あり。温泉成分が濃く、川辺が最も近く眺望が良い「トチニの湯」が一番人気があります。

 雪はまだ降っていなかったのですが、「杉の湯」「もみじの湯」は閉鎖していたので、「かつらの湯」「どんぐりの湯」「トチニの湯」の3箇所を紹介したいと思います。

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夏も湯船の先に落部川が見えて、とても開放的だと思った「どんぐりの湯」なのだけど。冬は周りの草木が全部丸裸になってたので、さらに解放感がアップしてた。でも虫は一匹もいない。虫が一匹も、いない!!

 外が超絶寒いので、温泉も若干冷めるのか温度は長湯できるちょうどいい温度でした。あの頃は肩までお風呂につかり、顔をタオルでぐるぐる巻きにして完全防備で虻の恐怖に怯えながら温泉に浸かっていたのに、冬はサイコーだなって。私は一人、温泉でホッと一息つける至福をかみしめた。

 

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 そして吊り橋を渡らずに行ける、高床式になった小高い場所にあるのが「かつらの湯」。夏は入浴の札が借りられていて入ることができなかったが、順番待ちして手に入れた。

 ここはどんぐりの湯よりは少し温度が高めだった気がするけれど、段々になっている所に腰を落ち着かせて、「あー」って青空に流れる雲を見ているのサイコーでした。あと他の外湯に比べて誰にも覗かれないっていう安心感がある。

 

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 そして銀婚湯の中で最も人気で、最も温泉成分の濃い「トチニの湯」にも入れた。夏の虻と蚊のオンパレードとは打って変わって、聞こえるのは川の流れるせせらぎとドバドバと投入される温泉の音だけ。

 空気に触れると濃い緑色に見える温泉に入った時、外が寒すぎるせいでめちゃくちゃ熱く感じたけど、その後は快適すぎて、割と本気で「もう外に出たくない」。杉の大木をくりぬいた湯船の中でゆりかごのように温泉を全身で味わった。

 一番人気は伊達じゃなかったぜ。

 

戦慄、旅館の部屋を占拠される

 という感じで、先に温泉の良い所を語りつくしておこう。ここからは戦慄の……温泉旅行の一端をご紹介したいと思う。夏の虻もヤバかったけど、冬のあいつらもヤバかった。かつて、ここまで旅館の部屋で眠れぬ夜を過ごしたことはないと断言できる。

 日中思う存分に温泉巡りをして、美味しい夕食に舌鼓をうった私は、自分が予約した部屋に帰ってきて……身の危険を感じて部屋から逃げた。旅館の人が気を利かせてLEDライトの真下に布団を敷き、その布団の傍にオシャレなランタンを灯してくれた。さらには部屋に暖房を入れて温めてくれた。そこに奴らが群がっていた。そう、でかくてブンブン言ってる巨大な、カメムシがっっ!!

 それを初めて目撃した時の私の気持ちは筆舌に尽くしがたい。確かに奴らを見つけたらガムテでペッてしてくださいねと言われたが、そんなことしても退治しようがないほどの量がいるんだけども、それはいかに!!

 ジッとしていてくれれば退治しようもあるが、空中を飛び回っているし。ペットボトルに水いれた状態で、ポトンポトン捕獲する方法もあるらしいが、一歩間違えると本当に部屋の中が異臭まみれになってしまう。どうすればいいのだ、一体どうすれば!!!

私の部屋は玄関だけ

 この時、私は招待宿泊かなんかでいい部屋に宿泊してたんですよ。玄関があって、引き戸一枚隔てて客間が10畳以上あって、広縁付き。1人で宿泊するのにはちょっと広すぎて落ち着かない感じ。とはいえ、カメムシに部屋を占拠されて存在を許されたのは、暖房1つ入らない玄関だけってどういうことなの?と。

 まあ早々に奴らを退治することはスッパリと諦めました。というか普通に怖かったんで、部屋全体をカメムシ臭にしないためにも。初めは座布団一枚と充電器とスマホと本を部屋からこっそり奪取して、玄関で籠城してたんですけど(玄関は寒いのでカメムシの野郎は一匹もいない)当時は「私、どこで寝るの!?」とパニックになってました。もう逆に面白くなってきてしまって、Twitter実況なんかもしてたかもしれないけど。

カメムシ誘導大作戦

 夜1時くらいまで粘って、布団を玄関側に持ち込んで寝ることも真剣に検討したんですけどね。さすがに風邪引きそうだったので、私は以下の作戦を決行しました。

1.部屋の暖房を切る
2.窓側、つまりは広縁の電気をつける
3.そしてランタンと部屋の中心の電気を切る

 まあなんてことはないけど、この3つだ。越冬カメムシは暖かくて明るい場所を好む。であるならば、部屋の明かりと部屋の空調を切り、窓側の広縁に奴らを誘導しようという作戦を思いついたのだ。広縁はいちおうプラスチック張りの引き戸に隔てられているので、奴らが全部あちらにいけば、おのずと部屋の安寧は再構築されるという手はずだ。

 ちなみに1⇒2⇒3と実行するたびに、玄関に撤退することを繰り返していたので、私は相当ビビリです。カメムシを誘導する間はじっと息を殺して玄関に潜伏してました。こうして無事、夜2時くらいにカメムシを広縁に全部誘導させることに成功した。

 けれどもさすがにLED電気の真下で寝る気にはなれなかったので、出来る限り広縁から離れた場所まで(つまり玄関付近)布団を引っ張り、布団の中に奴らがいないことを確認して、羽音すら聞きたくないので布団を頭まで被り、顔にマスクをして完全防備で寝た。

――次の日、寝坊した。

本日のまとめ

『ヤバい』この一言に尽きる。

 夏の貸切露天風呂もヤバかったが、中途半端な冬の始まりもヤバかった。夏の温泉よりもスリリングさがあった。もうできることならずっと外の温泉に浸かっているか、内湯につかりながら朝を迎えたいレベルだった。

 もう1度体験したいとは思わないけれど、これも自然の摂理かなと。越冬カメムシが大量発生する年は、めちゃくちゃ雪降るっていう噂も確かこの時当たってたと思うし。季節柄仕方がないのかもしれない。貴重な体験が出来たと……思っておこう。

 ちなみに2泊目の部屋は湯治用のとてつもなく簡素で寒い部屋だったので、当然夜は一回も暖房をつけず、部屋にある炬燵に電気も入れず、凍える部屋で寝ました。朝起きると、その寒さに耐えられなかったのかカメムシは死滅してました。

おわり。

※なお温泉写真は許可を取った上で撮影しています

 

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