『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』を読んで
どうやら僕たちは「働く=就職」と勝手に思い込んでいないか。なぜか。安定した収入が欲しいから。じゃあ、それは食うため?好きなことをするため?ところでお金って本当に必要?
岡田斗司夫さんとFREEexによる著書『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』を読みました。ブックファーストで長々と立ち読みした末に購入した本。就職とか就職活動とか転職活動とか聞きたくもない言葉だけれど、それでも読んでよかったと思っている。
私もそうだったのですが、大学3年生頃になると就職活動を始めなければいけないと焦り始めます。周りがそう動き出すのでそうするものと思っていました。けれどせっかく就職したにも関わらず半年も経たずに辞めてしまう。「働いてお金を稼がないといけない」「けれどこれで本当にいいのか」という悩みは尽きない。
そういう人たちに是非読んでほしいと思うので、今回はこの本を読んで印象に残った部分を紹介したいと思います。紹介しなれていないので、ちょっと長いけど。
「会社に就職するのが当たり前」は終わりつつある
一万ほどの事業所、三万三千人の個人を対象にした「就業形態の多様さに関する総合実態調査」(厚生労働省、2010年実施)というアンケートでわかったのは、非正規社員(派遣社員やパート契約で働いている人)が全労働者の40%近くいて、世間で言われているように早く正社員になりたいと考えているかと思えば、そうでもない。統計的には半分くらいの人は正社員に変わりたいという希望を出していない。なりたいと望んでいないんですね。正社員になったほうがしんどいと思っているからです。
知らなかった。
かくいう私も、正社員になりたいと思っていない部類だ。社会保険的な面で正社員でないと困るという人もいるかもしれないし、海外では派遣社員というのはいつ辞めることになるかわからないから通常よりも給料が高く設定されているらしいが、日本ではそんなことはない。だから生活的には厳しい面もあるのだけれど、それでももう正社員にそれほど魅力がないと思う。
勿論、中には正社員になりたいと考えている人もいるだろうが、こう思う人が増えているのにはきちんとした背景があるようだ。
「就活」がしんどい理由は会社が人を雇わないから。会社が人を雇わない理由は以下の3つ。
①企業の平均寿命が5年を切り、ずっと安泰な会社はなくなった。
②新人を雇って仕事を教える余裕がない。面倒な仕事しか残っていない。
③怖くて人が増やせない。会社が社員を増やせるのは「今年と同じだけの収入があると信じられるから」
なるほど。今までなんとなく景気が悪いから仕事が見つからないのかと勝手に思っていたが、こういう時代の流れがあるからこそなのか。
お金は何のためにあるのか
第二章では、私達が必死こいて働いて手に入れているお金の話が書かれている。
何のためにお金が必要なのかと聞かれたら、みんな決まって「食うためだろ」って答えます。「食うため」にお金が必要。ほんとうでしょうか。考えずに回答してください。貴方は収入の何パーセントを「食うため」に使っていますか。
単純に自宅で1か月生活(私の場合は自宅に住まわせてもらう)するための対価は、時給と働いている日数によって上下するが大体収入の2割くらいだ。ニートをしていた時期は家事を積極的に手伝う対価として自宅で生活させてもらっていた。もしくは利子なしで延滞していた。
改めて考えてみると「食うためだ」と言いながら、実際はそれほどお金を使っていないことがわかる。それでも何か欲しいものを得るため、日々働く自分への御褒美、ちょっとした贅沢のためにお金が欲しいと思う。もっとお金が必要だと思ってしまう。何かを手に入れるためにはお金が必要だとすぐに考えてしまう。
本書では携帯音楽プレイヤーを例にあげて、これを手に入れる方法は6つあると紹介している。
新品を定価で買う、ネットで安く買う、中古をネットで買う、何かと交換してもらう、だれかからもらう、必要な時だけ借りる
極端な話、携帯音楽プレイヤーを手に入れるために、仕事を探して履歴書を送り、面接を受けて働き始めて稼ぐ時間と手間をかけるより、誰かに借りた方が早い。本当に手元に持っておきたいものだけ持っておき、あとは誰かと共有する感じ。
また私たちがお金を使う理由として、以下のような理由があるそうです。
親と同居なら安上がりでラクに暮らせるはずなのに、いっしょの煩わしさがイヤだから別々に暮らす。家賃も家電も食費も光熱費も、何もかもが大きくなる。数倍・数十倍のカネをかけて、僕たちは親から「独立」しようとします。すべては煩わしさから逃れるため。
私も去年、父親から言われた一言でカチンときて、お金を貯めたらこんな家出て行ってやるんだから!と考えていたことがあったので耳が痛い話です。私達はつい煩わしさから逃れるために、またストレスを発散させるために無駄にお金を使ってしまいますし、もっともっとお金を稼ごうとしてしまいます。
それでは一体なんのためにお金が必要なのか?著者なりの考えはこうです。
「誰かの世話をするために」「この人のために何かしたい」と思った時。これこそが稼ぐ動機、お金が必要な理由の本質ではないか。自分1人が生きていけばいいのならいろいろな方法がありますし、お金以外でもなんとかなるかもしれません。でもだれかの世話をするとなると、自分だけではどうにもならないこともある。
今の私は常に自分のことしか考えられない状態です。結婚していて子どもがいるわけでもないし、自分1人だけが生きて行けばいいと思っている。極端な話、生きていけないのなら死んだっていいと思っている。
それは両親が今はまだ病気もなく、介護して世話する必要がないからそう思えているだけだ。いわば自分のことを考えている余裕がある。けれどいつかその日が近づいて来た時、私は「自分のことは自分でなんとかしてくれ」と言ってしまうのだろうか?それとも「両親のために何かしたい」と思えるのだろうか。
「いい人」が、最後に生き残る
これからの時代は人口激減に伴い仕事の絶対量が少なくなり、万が一ギャンブルや運に近い就職活動や転職活動を通じて、会社に潜り込めたとしてもその会社がどうなるかわからない。「就職して働かないと」と焦ったり恐れたりしているけれど、心の底では欲していない。そんな今、貨幣経済に取って代わろうとしているのが「評価経済」だと書かれています。
評価経済の話は長くなるので割愛しますが、簡単にいうとこんな感じ。
お米の例でいうと「お米をお金で買う」という人と、「お米はタダでもらう」という人の両方が共存している世界。優位なのは「有益なつながり」が多い人。すなわり評価の高い人です。お金が唯一無二の正義であった時代の終焉をかぎ取って、それに対応しようとするかどうか。
遠くない未来、来るであろう時代に対応するためには、就職した会社に雇われて働くような「単職」ではなく、お金になるときもあればならない時もあるものも含めて多職へシフトすること。誰かの手伝いをすること。そして「いい人になること」が大切だと書かれています。
いい人とはどんな人なのか。『ワンピース』のルフィ。『こち亀』の両さん、『ドラえもん』ののび太くんが挙げられている。例えばのび太くんが「ドラえもーん!」と甘えれば、ドラえもんが「仕方ないなぁ」と言いながら、ひみつ道具を何でも出してくれる。なんて羨ましい。
この愛されキャラをめざすために、いちばん簡単なのは「いい人」になること。「いい人」なら仕事があまり出来なくても、性格に少し問題があっても、空気が読めなくてもうまく世の中を渡っていけます。
いい人になるにはどうすればいいのか。
影でこっそり人の悪口を書いたり、人に煙たがれられることをしたり、人が嫌がるような商売をしたりすると、自分の印象に絶対悪影響が出てきます。長くつきあっているうちに、相手の性格をよくよく知ってみたらいい人だったというのは見た目至上主義社会とは相いれません。第一印象で「いい人だな」と思ってもらえなかったら損をするんです。
私のようにな。パッ見のせいで「イヤな人」「カンジの悪い人」「意地悪そうな人」「冷たそうな人」と思われる。本当にそうであるかどうかはおいておいて、そう思われると損しかない。私は損な性格をしているということでしょう。知っています。ならばどうすればいいのか。
「いい人戦略」でこれからを生きて行く
それは「一日5分、毎日5つ、人をほめる」こと。ほめてツイートする。リアルでほめて紹介する。ネットでほめて語る。けなしたり、批判したり、アドバイスしたり、提案したり、はダメ。必ず、きちんとほめる。
褒めるのは苦手だけれど、これくらいなら私にも出来るかもしれない。
そして最後に、
なんとなく生きて行って、人助けができて、だんだん「いい人」と呼んでもらえるようになって、まわりには気持ちのいい仲間がいる状態。こんな生き方のほうが、ずっと楽しいのではないかと思います。
と締めくくられています。
本日のまとめ
働くとはどういうことなのか、改めて考えるきっかけとなった。働く=会社に雇われて正社員として働くことを考えがちだが、それが難しくなってきている今、いつまでも就職や転職にしがみつくよりももっと違う生き方を考え、どんどんやっていく時期に来ているのかもしれない。
派遣社員として働いたり、正社員として企業で働ければそれでいいわけじゃない。
就職しない生き方が正解というつもりはないが、「働く=会社に雇われて働く」以外にもいろんな働き方、いろんな生き方があるのではないかと思った。自分のキャラクターを少しずつ評価してもらえるように頑張る感じ。それは別段会社で働くことに限らない。自分の身の回りに目を向け、誰かをお手伝いするという働き方には目から鱗が落ちた。就職するだと敷居も労力もあがるが、お手伝いと聞くと手を出しやすい。
今はITを通して、いろんな人と繋がることができる。だからこそ、その繋がりを大事にして育てて行くことが大切なのかも。是非読んでほしい。オススメです。