空想島(6畳半)

空想をすることが、生きる糧となり地となり肉となり

宮崎駿作 「風立ちぬ」 鑑賞

7月31日、7月、最後の日。

私にとっても、この日は今までの自分に別れを告げ、ひとつになる大切な日になるだろうと思ったので、見ておきたかった。

宮崎駿監督のジブリ最新作「風立ちぬ」は、神話と化したゼロ戦の誕生、「美しい飛行機を作る」という夢を持つ主人公二郎と結核を患う少女菜穂子との出会い別れ、世界的に著名な飛行機製作者であるカプローニおじさんとの時空を超えた出会いなど、様々な要素を取り入れた異色の作品です。

詳細は、是非映画を見て、感じてもらえればいいと思うので、割愛しますが。以下は私の感じたことをつらつらと書きつづろうかと思います。ネタバレになる可能性がありますので、ご注意ください。

作品全体を通して、私が強烈に感じたのは「夢」と「葛藤」でした。 主人公は飛行機の設計者になって美しい風のような飛行機を造りたいという夢を幼い頃に持ちます。そして夢を実現させるために、東京の大学で航空工学を学び、やがて大軍需産業のエリート技師となります。飛行機と言えども、当時は戦争をするための、爆撃するための戦闘機設計だったと思いますが、昼夜問わず飛行機の事を考え、設計に取り組む様子には、狂気にも似た何かを感じました。ただ、新しいことを吸収し、綺麗な物を綺麗と言える、集中するとつい周りが見えなくなる、そんな彼の実直な性格から、夢に向かってひたむきな姿勢を続けられる人という印象を受けました。

私にも、小さな子供の頃なりの夢がありました。けれど、少しずつその夢を育てていくように明かりを灯し続けられるということは、難しいことです。だからなのか、一番初めに感じたのは主人公に対する羨望でした。国が戦争で崩壊へ進む中で、自分の追い求める「夢」と「働くということ」、そして愛する女性の病である結核と「生きるということ」が密接に絡み合い、彼らは濃厚な時間を過ごしてきたのだと思いました。現代を生きる私達は、どれだけ濃厚な時間を過ごしているだろうか?と考えました。これは、今後の私の課題でもあります。

また作品内に、主人公が休暇として軽井沢の高原ホテルを訪れるというシーンがありました。始めは、特に説明もなかったし、なぜいきなり軽井沢?と思ったのですが、彼は自分の本当は実現したいと考えている夢と、仕事としてやらなければならない戦闘機作りという狭間で葛藤していたのではないかと思いました。

やりたいこととやらなくちゃいけないこと。これも今のわたしたちに、置き換えて考えさせられるというか。今まで努力して続けていたことはあるけれど、それらは全て耐えてきたというわけではなかったと思う。思い通りに行かない所もあったけれど、熱中できる部分があって、それが結果的にやりたいことに繋がっているようにも思う。私たちは常に葛藤と共にある。そんな風に感じました。

 

映画館は夏休みだからか、小さなこどもで溢れていました。おそらくはポケモンを見に来たのではないかと思います。見ている年齢層的には同年代から御老人くらいの年代まで様々。中にはジブリということで、見に来たのだろう中学生くらいの子どももいました。少し大人向けな内容だとは思いましたが、良い映画でした。もう一度、見たいような気がします。

風立ちぬビジュアルガイド (アニメ関係単行本)

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